種子の発芽メカニズムの解明

 吸水のみで発芽を開始するトウモロコシ(Zea mays)種子、吸水後、赤色光の照射が必要(光発芽種子)なシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana(L.)Heynh.,Ecotype: Columbia)種子を用いて発芽制御系を調べています。

 種子は極度の乾燥状態に曝されるため、LEAタンパク質といった乾燥耐性タンパク質を胚内部に貯めています。これらは吸水後、速やかに分解されますが、その分解酵素については解明が進んでいません。私達はトウモロコシ種子を材料に、吸水直後に数時間だけ活性上昇するタンパク質分解酵素を見つけました。阻害剤の特徴からセリンプロテアーゼであることを解明しましたが、非常に不安定な酵素であることから、性質の詳細はまだ明らかになっていません。

 また、シロイヌナズナ種子では吸水後、赤色光を照射することで発芽を同調化できます。この条件を使って植物ホルモンの一種、ジベレリンの役割を解明しました。赤色光照射後、種子内でジベレリンが合成されることは知られていましたが、ジベレリンがどのように発芽を誘導しているのか、そのメカニズムについては明らかになっていませんでした。私たちは、赤色光照射によってジベレリン応答配列を持つ数種のショ糖分解酵素(インベルターゼ)の遺伝子発現が上昇すること、この上昇は近赤外光によって打ち消されること、また、赤色光と共にジベリン合成酵素阻害剤を処理した場合、発芽は起こらず、インベルターゼ遺伝子の発現も起こらないこと、を見いだしました。このことから、①シロイヌナズナ種子は吸水後、フィトクロームによって赤色光が感受され、②赤色光信号によりジベリン合成酵遺伝子の発現が上昇し種子内でジベリンが合成され、③ジベリンはショ糖分解酵素遺伝子を発現させ、④これらの酵素により種子胚(特に仮根細胞内)のショ糖が果糖とブドウ糖に分解され、⑤糖類の分子数が倍になることで胚(の仮根)細胞の浸透圧/吸水力が増加し、⑥吸水によって膨張した仮根が種皮を破り、種子から突出(発芽)する。とのモデルを打ち立てました(Bioscience, Biotehchnology and Biochemistry 68, 602-608)。

 これらの研究は科学研究費補助金(基盤研究(C)、課題番号09660071)のサポートを受けて行われました。

山形大学 農学部 分子細胞生化学研究室

主に高等植物をターゲットとして、生命及びその活動の仕組みを生化学・分子生物学的に理解・解明することを通して教育研究を行っています。